医療用医薬品の「妥結率等報告」制度とは
令和6年度診療報酬改定により、保険薬局と許可病床数200床以上の病院を対象に、「医薬品取引価格の妥結率、単品単価契約率、一律値引き契約に係る状況」の報告が義務化されました。
この制度は、薬局と医薬品卸との間で公正な価格交渉と契約が行われているかを把握し、医薬品流通の透明性を高めることを目的としています。薬価差の是正や安定供給にも関わる重要な報告制度です。
報告期間と提出期限
対象期間は、令和7年4月1日から令和7年9月30日まで。
この期間の実績をまとめ、令和7年11月28日(金)必着で、東北厚生局(宮城県の場合は指導監査課)に報告書を提出する必要があります。
報告にあたっては、厚生労働省が定める**「様式85」**を用います。
提出先は、薬局所在地を管轄する東北厚生局の各県事務所です。
(宮城県内の薬局は「東北厚生局 宮城県指導監査課」へ)
宮城県 | 東北厚生局指導監査課 | 〒980-8426仙台市青葉区花京院1-1-20 花京院スクエア21階 | Tel:022-206-5217Fax:022-726-9268 | 指導監査課 |
提出を怠ると「調剤基本料が半減」に
報告の未提出や、妥結率が著しく低い場合には、翌年度に大きなペナルティが科されます。
具体的には、次のいずれかに該当すると、翌年度の調剤基本料が所定点数の50%に減算されることになります。
- 当該薬局の妥結率が50%以下である
- 妥結率・単品単価契約率・一律値引き契約の状況を報告していない
調剤基本料が半減すれば、薬局経営に直結する影響が出ることは避けられません。
特に宮城県内でも個人経営・中小規模の薬局では、基本料減算が続くと業務や地域対応に支障をきたす可能性があります。報告漏れは「うっかり」では済まされないため、早めの準備が肝要です。
提出時に必要な書類
報告書は**「様式85」**を基本としますが、薬局の規模により添付資料が異なります。
- 月間処方箋受付3万5千回超のグループに属する薬局
→ 契約書の写し等の妥結率の根拠資料を添付する必要あり - その他の薬局
→ 様式85のみ提出で可
なお、契約書を取り交わしていない場合は、取引のある卸業者ごとに「価格が変更されない旨を証明する書類」(両者の押印付き)を提出することで代替できます。
この場合、卸売販売業者との協議・押印作業に日数を要するため、10月中旬からの着手がおすすめです。
報告作業をスムーズに行うポイント
- 卸業者ごとに交渉・契約内容を整理する
妥結率や単品単価契約率の算出には、取引ごとの契約価格が基礎となります。取引先卸と早めにすり合わせましょう。 - 前年の報告内容を再確認する
令和6年度(2024年)報告の控えを確認し、前年との契約形態・妥結状況の変化を把握しておくと、記載ミスを防げます。 - 複数店舗を運営している場合はグループ内集計に注意
大手グループやフランチャイズ傘下の薬局では、グループ単位で処方箋枚数を合算して算出するケースがあります。該当する場合、統括本部への確認が必要です。 - 提出先・期限の最終確認を行う
郵送の場合は「11月28日(金)必着」が条件です。余裕をもって1週間前には発送準備に入りましょう。
今後の制度動向にも注目を
厚生労働省は今後も「薬価流通の透明化」を進める方針を示しています。
令和8年度以降は、報告内容の電子化やシステム連携による効率化も検討されています。
一方で、妥結率が低い薬局への監視は強まる方向にあり、薬局M&Aや事業承継を検討する際にも、過去の報告履歴が評価項目となる可能性も指摘されています。
妥結率の低下や報告未提出は、単なる事務上の問題にとどまらず、薬局の信頼性や取引先との関係、将来的な事業価値にも影響する点を意識しておきましょう。
まとめ:報告漏れは「経営リスク」
令和7年度の「妥結率等の報告」は、宮城県内のすべての保険薬局にとって重要な年次業務です。
届出を怠ると、調剤基本料の減算という直接的な経営ダメージが発生します。
宮城県の薬局経営者・管理薬剤師の皆さまは、10月中の準備着手・11月中旬の提出完了を目標に、余裕を持った対応をおすすめします。
地域の医薬品供給体制を守るためにも、妥結率報告は確実に、そして早めに進めていきましょう。
参考リンク)東北厚生局:妥結率等の報告について


