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【コラム】2026年調剤報酬改定で「小規模乱立」は終焉へ

――調剤基本料1・後発品調剤体制加算の見直しで中小薬局はどう変わるのか

2026年度調剤報酬改定に向けて、11月28日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で厚生労働省が示した議題は、薬局経営にとって極めて重大な意味を持つものとなりました。特に、「調剤基本料1」をめぐる議論は、小規模薬局の乱立、いわゆる“門前の飽和状態”に対する問題提起として位置付けられています。

現在の制度では、処方箋集中率が高くても、一定の処方箋枚数があれば調剤基本料1の算定が可能です。その結果、「売上は少なくても利益率は高い」小規模薬局が医療機関周辺に増え続け、中には地域貢献機能が不十分な薬局が数多く存在していると指摘されています。本稿では、厚労省が示した問題点、2026年調剤報酬改定の予測、そして中小薬局が今から具体的に備えるべき方向性について、最新情報をもとに詳しく解説します。


1. 厚生労働省が指摘した“調剤基本料1”の問題点

――「小規模乱立」の構造的背景

厚労省は今回の資料で、「調剤基本料1の構造が、小規模薬局の乱立を招いている」と明確に指摘しました。

■指摘1:処方箋集中率が高くても、枚数次第で調剤基本料1を算定できてしまう

本来、門前集中率が高い薬局は、調剤基本料1ではなく特別調剤基本料となるべき存在です。しかし現行制度では、

  • 「処方箋受付回数が600回を超える」
  • かつ、集中率が85%以上である

という薬局でも調剤基本料1の算定が可能なケースがあります。

その結果、
「小規模でも高い点数が算定できる門前薬局」 が増加しているのです。

■指摘2:備蓄品目数が少ないのに後発品調剤体制加算3を算定

調剤基本料1薬局(n=28,754)の後発医薬品調剤体制加算の比率は以下の通りですが、集中率85%以上の薬局(n=12,424)ではさらに顕著です。

加算区分全体集中率85%以上
後発医薬品調剤体制加算113.5%10.6%
後発医薬品調剤体制加算231.8%29.1%
後発医薬品調剤体制加算338.0%46.7%
算定なし16.7%13.7%

つまり、備蓄品目数は少ないのに、最も点数が高い「後発医薬品調剤体制加算3」を低コストで算定している構造が明らかになりました。

■指摘3:薬剤師数が少ない“低機能薬局”が多数存在

門前薬局には、薬剤師1〜2名で運営しながら調剤基本料1を算定する薬局も少なくないというデータがあります。

これらの薬局は

  • 地域支援体制加算の届出が少ない
  • 在宅対応が限定的
  • 地域連携や医療情報の取り扱いも弱い

といった傾向があり、「地域医療に必要な薬局機能」を十分に果たしていない点が、中医協で問題視されました。


2. 中医協での議論:「薬局の立地」と「地域差」を評価要素に

2026年度調剤報酬改定では、調剤基本料の評価体系を大幅に変更する可能性が高まっています。特に注目すべきポイントは以下の2つです。

■(1)医療資源量の地域差を評価

これまでの基本料は「規模・集中率中心」でしたが、今後は

  • 医療機関数
  • 患者数
  • 地域の医療資源量

といった「地域差」を加味した評価制度に移行する可能性が指摘されています。

➤ 都市部

医療機関が多く、門前薬局が乱立する地域は、
調剤基本料の適用を厳格化する方向 になる見込み。

➤ 地方

医療機関が少なく、薬局が地域医療の“最後の砦”となっている地域では、
敷地内薬局への例外措置(特別調剤基本料Aの対象外化等) を検討。


3. 集中率が高い薬局の“高すぎる損益率”

――見直しの背景にある「不公平感」

厚労省資料では、特に次の点が取り上げられています。

■利益率が高すぎる

集中率85%以上かつ処方箋2000枚以下の薬局は、

  • 備蓄品目が少なくコストが低い
  • 調剤基本料1で高い点数を算定
  • 後発品調剤体制加算3で利益が増える
  • 結果として損益率が微増(令和6年度改定後)

という実態が示されました。

つまり、
「地域医療に必要な機能を果たしていないのに高収益である」
ことが制度への不満を招き、見直しの方向性が強まっているのです。


4.2026年調剤報酬改定はどう変わる?

今回の議論を踏まえると、2026年調剤報酬改定では次の方向性が極めて濃厚です。


◆ ① 調剤基本料1の大幅な見直し

キーワード:調剤基本料1、2026年調剤報酬改定

中医協では、

「処方箋集中率が高い薬局は、受付枚数にかかわらず調剤基本料1適用外とすべき」

という意見が複数出ています。


◆ ② 後発医薬品調剤体制加算の廃止または縮小

キーワード:後発品調剤体制加算

後発品使用割合が9割に到達した現状から、

「役割を終えた」「廃止すべき」

との声が強く、
2026年改定で廃止または大幅縮小 がほぼ確実視されています。


◆ ③ 地域支援体制加算の再編

基本料1薬局への優遇廃止とともに、

  • 地域フォーミュラリ参画
  • OTC普及啓発
  • リフィル処方への対応
  • 地域医療連携への参加

といった地域機能を重視した評価に転換すべきと提言されています。


◆ ④ 小規模薬局の乱立を抑制するための「集約化・大規模化」

薬剤師数の増加、薬局の乱立に歯止めがかからず、

  • 医療機関周辺に小規模薬局が増加
  • 医療資源が分散し機能が低下
  • 地域に必要な「対人業務」が十分に実施できない薬局が増えている

という現状から、集約化や大規模化を促すべきという意見が多く出されました。


5. 中小薬局が2026年改定に向けて今から備えるべきこ

2026年調剤報酬改定は、
「小規模乱立の適正化」と「対人業務強化」
の二本柱で行われると考えてよいでしょう。

特に中小薬局が備えるべきポイントをまとめます。


■① 調剤基本料1に依存しない経営体制へ

調剤基本料1の算定ハードルは確実に高くなります。
集中率が高い薬局は特に注意が必要です。

➤対応策

  • 地域支援体制加算の届出・要件整備
  • 在宅医療への参入
  • 服薬フォロー、疑義解釈、トレーシングレポートの強化
  • かかりつけ薬剤師の質向上と患者獲得

■② 後発品調剤体制加算の縮小・廃止に備える

後発品加算は今後縮小または廃止方向。
「在庫適正化」「備蓄戦略の見直し」が必須です。

➤対応策

  • 医薬品在庫の棚卸し・整理
  • フォーミュラリ導入に向けた準備
  • 卸との価格交渉の透明化

■③ “立地依存型”から“機能提供型”への転換

門前薬局は、
「立地の優位性」に依存した経営が困難になる
可能性が高いです。

➤対応策

  • 在宅医療・多職種連携の強化
  • 外来フォロー(地域包括ケア)の担い手になる
  • 健康サポート薬局機能の整備
  • OTC・セルフメディケーションへの取り組み

■④ 中小薬局こそ“対人業務”を武器にできる

薬剤師数が少ない薬局ほど、対人業務の質は可視化しやすいという利点があります。

➤対応策

  • トレーシングレポートの質向上
  • ポリファーマシー対応
  • 残薬確認
  • 服薬状況の継続フォロー
  • 医師との情報共有

これらは改定後の加算の中心になる可能性が極めて高い分野です。


6. まとめ:2026年改定は“構造改革元年”。中小薬局は今こそ転換点に立っている

2026年度調剤報酬改定は、単なる点数改定ではなく
「薬局産業の構造改革」
と位置付けられています。

特に、

  • 調剤基本料1の厳格化
  • 小規模乱立の抑制
  • 後発品調剤体制加算の廃止議論
  • 地域支援体制加算の再定義
  • 対人業務中心の評価体系への転換

という6つの潮流は、薬局経営者にとって避けて通れない変化です。

「薬局が多すぎる」
「門前依存型のモデルは持続可能性が低い」
「地域医療に貢献しない薬局は評価されない」

これらのメッセージは明確であり、今後の制度設計にも色濃く反映されていくでしょう。


中小薬局が生き残るためのキーワードは “対人業務×地域連携×在宅”

これからの薬局は、立地だけでは評価されません。
地域の医療・介護の文脈で、どれだけ「必要な機能」を提供できるかが問われます。
変わるべき方向は明確です。

  • 調剤基本料1を失っても揺るがない経営体制
  • 対人業務の質を徹底的に高める
  • 医療と介護にまたがる連携の強化
  • 地域包括ケアの担い手としての役割確立

今取り組むかどうかが、今後の薬局経営の命運を左右します。


引用:厚生労働省「調剤について(その2)」:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001600992.pdf

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